2025年7月5日(土)@駒澤大学

部会長 村山元理(駒澤大学)

 表記の部会が7月5日(土)に駒澤大学で開催され、井上会長をはじめ20名以上が参加した。懇親会も15名以上参加し、実・学一体の交流が広がった。

 2本の報告があり、1本目は「経営文化学の構想」として村山が前座をつとめた。経営文化は山城章先生が学会創設前から議論し、『経営文化論』(村山元英著)も先駆的な業績として紹介された。佐久間・村山・井上『経営文化論』が5月に出版された。村山はこの編著に関わり、このテキストを授業で利用する中で、企業文化、組織文化が日米でいかに論じられてきたかを全般的に整理・解説した。『エクセレント・カンパニー』の原書では、7Sの一つに共有価値(shared values, i.e. culture)がすでに利用されていることが判明した。またE.H. シャインの第5版『組織文化とリーダーシップ』の翻訳が今年に宇田理教授によって公刊されたので、最新の研究動向を理解できる絶好の機会となった。

 特別講演として山城章賞を受賞したばかりの野林晴彦教授から『日本における経営理念の歴史的変遷-経営理念からパーパスまで』というご著書と同じタイトルのご講演があった。「経営理念」という概念はその意味が非常に広範で曖昧であることから、同書では第1部「経営理念という言葉の誕生から普及まで」として70年代までに3つの経営理念概念が誕生したことを歴史的に位置づけた。その中で山城章編(1972)などが経営理念研究を収束させるものであった。第2部では「企業組織の経営理念」《概念3》の歴史的変遷」として50年代以降の「経営理念機能論」と「経営理念本質論」が論じられた。

 第1部に関連して、グリコの『我社の江風会運動』(1940)における新・経営理念の表記に、概念1=産業報国の影響のもと、概念2としての江崎利一の経営者理念が説かれ、江風会運動の徹底により概念3のグリコの経営理念が形成されることが新たに分析された。

 第2部に関連して、テキスト化によって生じた「経営理念機能論」、経営理念の構造論、経営理念の構造的変化の2類型、最新の「パーパスは経営理念か」に対する2つの解釈の提示などが提示された。その他、経営理念の怪しさ、理念浸透は洗脳かなど議論は尽きなかった。

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