◇◇第92回全国研究大会 大会開催記◇◇
大会副実行委員長 呉贇
日本マネジメント学会第92回全国研究大会は、2025年10月3日(金)から5日(日)の三日間にわたり、統一論題「構想実現力 ~教育と共創~ 常に成長する組織が持っているもの」のもと、周南公立大学を主会場として開催された。
本大会は、山口県周南市を舞台に、理念やパーパスに基づく構想力、そしてその実現を可能にする戦略と共創体制のあり方に焦点を当て、理論と実践の両面から組織の成長を探究する貴重な機会となった。大会の開催にあたり、大会実行委員長は髙橋真実先生(周南公立大学)が務められた。

【初日の産業視察:実践と学びの連動】
大会初日の10月3日(金)は、実務との連携を重視する本学会の伝統を踏まえ、4つの特色あるプログラムが実施された。周南市の産業発展を支える「ものづくり」の現場を包括的に学ぶことを目的とした、学術的価値の高い産業視察であった。
株式会社出光プランテック徳山の企業見学では、参加者はまず講堂にて企業から丁寧な企業概要の説明を受け、1957年の操業開始以来、グループの主要事業所として西日本全域に製品を供給してきた装置産業の歴史について理解を深めた。続いて港湾業務に関する外航船業務の説明を受け、シーバス着桟のAISシミュレーション動画を視聴することで、海上輸送のオペレーションについて学んだ。さらに、大浦事業所への現地視察(見晴台の見学を含む)では、実際に停泊している外航船を見ながら業務の説明を受けるなど、石油化学コンビナートの全体像を間近に見ることができた。重厚長大産業が社会環境の変化に対応しながら新たなエネルギー事業に取り組む姿や、「地元とともに」を重視する企業活動など、石油コンビナートへの理解を深める貴重な機会となった。
また同日には、町の中の酒蔵見学(株式会社はつもみぢ)、人間魚雷「回天」記念館見学、周南工場夜景クルージングいったエクストラプログラムも実施され、地域社会への理解を深める機会となった。
【統一論題セッション】
10月4日(土)および5日(日)には、周南公立大学および徳山駅前賑わい交流施設、徳山商工会議所を会場として、統一論題セッション、グローバル化セッション、ワークショップ、産学共創セッション、自由論題セッションが開催され、活発な議論が展開され。
10月4日の統一論題セッション1では特別講演が開催され、山口県が明治維新の原動力となった歴史を有することに鑑み、村岡嗣政知事(山口県知事)を迎え、「山口県の更なる成長と持続可能な社会づくりに向けて」と題した講演が行われた。また、徳山毛利家14代当主による「毛利家よもやま話~生き残り戦略~」の講演のほか、地域企業や台湾台南市政府からの報告なども行われ、「構想実現力」というテーマが多角的に掘り下げられた。
翌日の統一論題セッション2では、「構想実現力~教育と共創」をテーマに、「患者満足」を超えた看護ホスピタリティや、ホスピタリティにおける「関心」と感動創出、理念と教育によって創り出される清掃サービスなど、組織の成長を支える要因について実践的な報告がなされた。
【グローバル化セッション】
本大会では3つのグローバル化セッションが設けられ、海外から4名の研究者が発表を行った。企業のイノベーションと成長や、CEOの死亡顕著性が企業フィランソロピーに与える影響など、国際的視点からの研究成果が共有された。
【ワークショップ】
二つのワークショップでは、医療分野における臨床医の起業と、革新的プロダクトの市場浸透という二つのテーマが取り上げられた。研究成果の事業化に伴う「魔の川・死の谷」といった障壁や、優れた技術を有する製品であっても市場受容が進まないジレンマが指摘され、イノベーションを社会実装する際の実務的課題について議論が行われた。
【産学共創セッション】
産学共創セッションでは、企業と大学の連携によるイノベーション創出の可能性が検討された。文系学部への期待や、大学コンソーシアムからの提言としてPSIエコシステムを通じたスタートアップ支援の事例が紹介され、産学連携を通じた構想実現の重要性について議論が行われた。
【自由論題セッション】
自由論題セッションは2つのセッションで計8本の報告によって構成され、経営理念の浸透、地域金融機関のサステナブルファイナンス、中小企業の両利き経営、サプライチェーンのDX化、インクルーシブビジネス、環境会計、ソーシャルビジネスなど、多様なテーマに関する研究報告が行われた。企業経営の理念や組織行動の分析から、地域社会や環境問題への対応、デジタル化への取り組みまで、現代企業を取り巻く課題を理論的・実証的に検討する報告が並び、経営学研究の広がりと実務との接点が示された。また、日本の経営文化の発信や中国近代化と日本の対中技術協力など、国際的・歴史的視点からの研究も提示された。
なお本大会では、初めて「学生ランチョンセミナー」が設けられ、学生の研究・実践活動について学生と学会員の間での意見交換が行われた。学生にとって自身の活動と研究・実社会との関係を理解する契機となり、学習意欲の向上と人的ネットワーク形成につながる有意義な機会となった。
さらに、学会開催に合わせて「やまぐち企業交流フェス」も周南公立大学で開催され、地域経済を支える魅力ある企業22社、周南市役所と台南市政府が参加し、会員との交流の場が設けられた。
本大会での活発な議論と交流が、今後経営学研究と実務の発展に寄与することが期待される。大会の成功は、実行委員長である髙橋真実先生(周南公立大学) をはじめ、組織委員長、実行委員および会員の皆様からの多大なご支援、そして開催校である周南公立大学の先生方ならびに関係各位のご尽力によって実現したものである。ここに改めて心より感謝申し上げる。
